- 個人間の借金に取り立てのルールはないが暴力行為は違法である
- 債権者から暴力を振るわれたときは刑事・民事の両面で訴えることができる
- 暴力を振るった債権者を訴えたとしても借金は残る
- 個人からの借金も債務整理で解決できるが注意点もある
個人間の借金を返済できず、相手から暴力を振るわれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
個人の債権者は貸金業者のように法律を守るとは限らないので、取り立ての際に暴力沙汰に発展するケースも見受けられます。暴力行為は違法ですが、平穏な生活を取り戻すためには借金問題を解決することも重要です。
この記事では、個人間の借金における取り立てのルールや、暴力を振るわれたときの対処方法についてわかりやすく解説します。
個人間の借金における取り立てのルール
まずは、個人間の借金における取り立てのルールを確認しておきましょう。
貸金業法は適用されない
個人間の借金には貸金業法が適用されないため、取り立て行為を規制する法律上のルールはありません。
この点、消費者金融などの貸金業者からの借金については、貸金業法で以下のような取り立て行為が禁止されています。
- 早朝や深夜の取り立て
- 債務者の職場や実家などでの取り立て
- 債務者の家族など第三者に対する返済の要求
- 貼り紙や立て看板などによる嫌がらせ
しかし、個人の債権者が上記のような取り立てを行っても、貸金業法違反の罪に問われることはありません。そのため、個人の債権者は貸金業者よりも厳しい取り立てをしてくることがあるのです。
度を超えた取り立ては違法になることも
貸金業法が適用されないとはいえ、個人の債権者が度を超えた取り立てをした場合は、刑法や民法など他の法律に違反することがあります。
当然ながら暴力は違法行為ですので、泣き寝入りする必要はありません。次章で、取り立て時の暴力がどのような法律に違反するのかを詳しくみていきましょう。
借金返済ができなくても暴力は違法!
債権者に正当な請求権があり、債務者が約束どおりに返済しなかったとしても、暴力は違法です。以下で、暴力の違法性を刑事と民事に分けてご説明します。
取り立て時の暴力で成立しうる犯罪
暴力は刑法などで定められた犯罪に該当します。借金の取り立て時の暴力で成立する可能性がある犯罪と、その刑罰は以下のとおりです。
- 暴行罪
- 殴る、蹴る、小突く、物を投げつけるなどの暴行を加えられた場合
- 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、拘留もしくは科料
- 傷害罪
- 暴行の結果、怪我を負わせられた場合
- 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
- 脅迫罪
- 「金を払わなければ痛い目に遭わせるぞ」などと脅された場合
- 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
- 恐喝罪
- 暴行や脅迫による恐怖心からお金を支払わされた場合
- 10年以下の懲役
- 強盗罪
- 暴行や脅迫により反抗を抑圧されてお金を奪われた場合
- 5年以上20年以下の懲役
民事で慰謝料請求も可能
暴力は民法上の不法行為にも該当しますので、暴力を振るわれた場合は慰謝料請求も可能です。
慰謝料額は暴力の内容や回数、怪我の程度などによって異なりますが、数万円~数十万円程度のことが多いです。
借金返済ができずに暴力を振るわれたときの対処法
借金返済ができずに債権者から暴力を振るわれたときは、泣き寝入りせず以下のように対処していきましょう。
警察に相談する
暴力は犯罪ですので、被害を受けた場合は警察に相談しましょう。警察から相手に注意ししてくれることもありますし、ある程度の怪我を負わされた場合は逮捕してくれることもあります。
ただし、軽い暴行を受けただけでは警察が動いてくれないこともあります。怪我を負わされた場合でも、診断書などの証拠がなければ警察が動かない可能性があることに注意が必要です。そのため、暴力を振るわれたら直ちに110番通報することが望ましいといえます。
残った借金の返済方法を交渉する
相手の暴力行為による刑事責任を問うことができたとしても、民事の問題は別ですので、借金はそのまま残ります。
もし可能であれば、返済期限の延期や分割払いなど、返済方法について相手と交渉してみましょう。ただし、暴力を振るうような相手と直接交渉するのは危険な場合が多いです。不安なときは無理をせず、弁護士を通じて交渉した方がよいでしょう。
慰謝料と借金を相殺する
返済方法の交渉をする際には、不法行為に基づく慰謝料と借金とを相殺し、返済額を減額してもらうことも検討してみましょう。
暴力事件の慰謝料は数万円~数十万円程度が相場ですが、交渉次第では、より大幅に減額してもらえる可能性もあります。特に、相手が逮捕された場合は厳しい刑事処分もあり得ることから、示談によって処分を軽くする目的で大幅な減額に応じることが期待できます。
債務整理をして貸主との交渉を弁護士に任せる
相手と交渉することが難しく、残った借金を返済することもできない場合は、債務整理がおすすめです。
債務整理とは、法律に則った手続きで借金を減額または免除してもらうことが可能な制度のことです。個人間の借金も債務整理の対象となります。
具体的な手続きとしては任意整理・個人再生・自己破産の3種類がありますが、弁護士に依頼すれば全面的に手続きを任せることが可能です。任意整理の場合は債権者との交渉が必要ですが、弁護士が代理人として交渉してくれるので、自分で債権者と直接やりとりする必要はなくなります。
状況に合った手続きを弁護士に任せることで、借金問題も解決して平穏な生活を取り戻せるでしょう。
個人間の借金問題を解決するために確認すべきこと
個人間の借金問題では、以下の3点によって解決方針が異なってくることがあります。そのため、最初に確認しておきましょう。
借用書があるか
個人間では、「借りた・借りてない」や「いくら借りたのか(いくら返済すべきなのか)」などをめぐって貸主と借主の意見が対立することがよくあります。このような問題で最も重要な証拠となるのは借用書です。
借用書がなく、双方の意見が食い違う場合は、貸主の側で貸した事実と金額を証明しなければなりません。貸主が不当に高額の返済を要求してくる場合は、その根拠の証明を求めることになります。
返済期限を定めているか
返済期限を定めていなかった場合は、貸主から一括返済を請求されると、相当の期間(通常は数日~2週間程度)が経過した後に全額を返済しなければなりません。
しかし、返済期限を定めた場合は、すぐに一括返済をする必要はないケースも多いです。期限前の請求に応じる必要がないのはもちろんのこと、分割払いの約束をしていて滞納した場合も、「期限の利益喪失条項」を取り決めていなければ、期限未到来の分を返済する必要はありません。
期限の利益喪失条項とは、「分割金の支払いを○回以上怠ったときは期限の利益を喪失し、残額を一括してただちに支払う」という契約条項のことです。
違法な利息を請求されていないか
闇金から借りた場合のように法外な利息を請求されている場合は、そもそも返済義務が生じない可能性があります。出資法の上限金利を著しく超える契約は公序良俗違反として無効となり、借主が受け取ったお金は不法原因給付に該当するため貸主に返還請求権が認められないと考えられるからです。
出資法の上限金利は年109.5%です。この金利を「著しく」超えたといえるかどうかは、弁護士に相談して確認した方がよいでしょう。
個人間の借金を債務整理するときの注意点
借金問題は債務整理で解決できますが、個人間の借金では以下の点に注意が必要です。
任意整理には応じてもらえない可能性がある
任意整理は、債権者との直接交渉によって借金の返済額や返済方法を改めて取り決める手続きです。法的な強制力のない手続きなので、弁護士が交渉したとしても、相手によっては減額や分割払いに応じない可能性があることを知っておきましょう。
他に貸金業者からの借金もある場合には、貸金業者からの借金のみを任意整理して返済の負担を軽減し、個人の債権者には早めに返済してしまうという解決方法も考えられます。
偏頗弁済をすると自己破産や個人再生に影響が出る
借入総額が大きく、自己破産や個人再生を検討している場合は、個人の債権者にのみ優先的に返済することは控えましょう。一部の債権者にのみ優先的に返済することを「偏頗弁済」といい、自己破産や個人再生の手続に支障をきたすことがあるからです。
自己破産では、裁判所への申立て前に偏頗弁済をすると「免責不許可事由」に該当するため、原則として借金の返済義務が免除されなくなります。
個人再生では、申立て前に偏頗弁済した金額は「清算価値」(債務者の保有財産の総額)に加算されます。再生計画案を提出する際には、清算価値以上の金額を返済する内容としなければならない(清算価値保障の原則)ため、個人再生による返済額が増大してしまうおそれがあります。
このような問題があるので、自己判断で動く前に弁護士に相談した上で、適切な解決方針を固めることが大切です。
取り立てが止まらないこともある
債務整理開始後は貸金業者からの取り立ては止まりますが、個人の債権者からの取り立ては止まらないこともあります。
個人の債権者は債務整理のルールを知っているわけではありませんし、手持ちのお金の中から貸しているのですから、必死に取り立てをしてくることが少なくありません。
弁護士に債務整理を依頼した場合には、その弁護士の事務所が債権者からの連絡の窓口になってくれます。個人の債権者に対しても弁護士が対応し、債務者へ直接連絡しないように説得してくれるので、取り立ては止まります。
個人間の借金問題の解決を弁護士に依頼するメリット
個人間の借金問題を解決するには、弁護士への依頼がおすすめです。そのメリットをまとめると以下のようになります。
- 返済義務や返済すべき金額、期限などを的確に判断してもらえる
- すべての連絡窓口になってもらえる
- 債権者に対して債務者への直接の連絡は控えるように説得してもらえる
- 債権者から暴力を振るわれた場合は刑事告訴や慰謝料請求などの手続きを任せられる
- 最適な解決方法を提案してもらえる
- 任意整理をする場合は債権者との交渉を任せられる
- 自己破産や個人再生をする場合は手続きを一任できる
債権者から暴力を振るわれたときには、まず弁護士に相談することが、全面的な問題解決につながるでしょう。
まとめ
個人間の借金を返済できない場合に暴力を振るわれるケースは少なくありませんが、暴力は明白な違法行為なので泣き寝入りする必要はありません。
とはいえ、暴力を振るう相手に直接対応するのは危険ですし、根本原因である借金問題を解決する必要もあります。深刻なダメージを受けないうちに、弁護士の力を借りて正しく対処することを強くおすすめします。
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